芝居の楽しさ

芝居の楽しさというのはどこにあるだろう。

もちろん、魅力の大半は、本番を迎えて客の視線を浴びながらライブをする。その感覚であるのは間違いないだろう。

 

だが私は稽古こそが一番の醍醐味だと思っている。

 

ああでもない、こうでもないとセリフのコトバと付き合う。そうして「ここに、いる」という感覚を何度も確認する。本番と違って「成功」や「失敗」にとらわれる必要がない。夾雑物を排して、自分や他人と真正面から向き合える時間である。

 

稽古においては「誰がどの役をやるか」というのは二次的な問題である(もちろん本番が待っている以上、無視はできないんだけどさ)。誰がどの役をやってもいいし、どのセリフを喋ってもいい。むしろ「自分の役」にとらわれずに「遊んでいる時」こそがもっともタメになる時間だ、と思う。これは私が演出の立場上、いろいろな役のセリフを役者に喋ってみせた経験から言えることだ。私自身はあまり主な役についたことはないが、稽古で「代役」をやることでたくさん学ぶことがあったと思う。

 

だから今回の公演も、役者のみなさんにはあまり自分の役にこだわらずにやってもらいたい。どの役にだってセリフがある。どの役のセリフであろうがそれを使って「遊ぶ」ことが出来る。いかに「遊ぶ」かが芝居の稽古の本質である。である以上、本番でAの役をやる人が稽古でBをやる、というのは立派な「訓練」なのである。どの役をやろうが稽古で学ぶべきものはただ一つ、「そこに、いて、コトバを、喋る」ということなのだから。

 

「代役」を立てることが多くなるだろうが、「なんだ代役ばかりでつまらんなぁ」なんて思っていたら勿体ない。「代役」こそが一番の「学び」のポジションなのだと考え、そんな時こそ、むしろ楽しんで稽古に臨んでもらえたら、と思っている。理想は自分の出番なんかなくとも毎回、全員が稽古に参加する事!

 

・・・なのだが・・誰もが忙しいこのご時勢、それを強制できないのが悩みだなぁ・・(笑)