自分はどこまで

九年前に活動をやめた時点で、たぶん自分は、演劇からはとっくにリタイアした人間なのだと思います。
年齢は既にイイところまできていて、既に捨てることのできない「生活」というものにがんじがらめになっています。
つまり、本当ならば「演劇」の場なんかに戻ってきてはいけないヒト、なんだと思います。
ずっと演劇畑で生きてこられた方からすれば、場違い甚だしい、というものでしょう。
何か申し訳ないような気になったりもします。

一体じぶんは、なぜ、また何かをやろうとしているのだろう、と不思議に思います。
別に「役者」なんかやりたいとは全く思っていないし、「作」や「演出」で成果を残し、演劇の道で花を咲かそう、なんて夢物語は夢にさえ見ません(それにそんな実力もありません)。

ただ一つ言えるのは、いまこの現在、何かしらのイミで、また縁で、まだこの自分を必要としてくれている人が、いる、ということです。
そして自分にできることは、10代から20代を通じて、曲がりなりにも培ってきた自分の演劇体験が、何かしらの形で役に立つのであれば、それを身をもって誰かに、伝えたい、残したい、ということなのかもしれません。

何を、伝えたいのかー
あえてコトバにしてしまえば、それは、「生きる」ということなのだと思います。
カラダをもってして、「生きる」ということー
そして演劇とは、「自由」だということー
それが私の得た演劇の本質です。シンプルですが強烈な本質です。

・・・この先、いつまで活動を続けられるかもわかりません、あるいは今回が本当のラストになるのかもしれません。

けれどもこの公演を通じて、ひとりでも多くの役者さんに、演劇を通じて「生きる」ということ、また「自由」ということを伝えられたら、と思います。