天神様の唄
1998.5.15~17 於:Plan-B
作・演出 十六夜ひばく
照明 吉島大輔
音響 浦山あづさ
衣装メイク 加藤亜希子
出演
矢谷真樹
真名子美佳
堀江健二
竹内秀雄
葉田野絵弥
有山智紀
斉藤恵
浅川尚志
加藤亜希子
沼尾悠
その家の裏には一本の桜の木と、稲荷をまつった神社があった。
作家をつとめながら愛人と関係を持つ夫と、それを見て見ぬフリしている自分の図太さに耐えるかのように縫い物に余念がない妻。無言でヒンズースクワットに励み続ける兄に、モデルガンづくりに熱心な弟。一家四人が、その家の内部で生活していた。
時はあたかも、少年による児童殺傷事件が新聞を賑わせている最中であった。犯人が未だ捕まらぬなか、ふだんから猫を殺して遊んでいた息子に不安を覚えた父は、母に相談を持ちかける。しかし「そうなったのは誰に責任があります?」「私が父親らしくしてなかったというのかい」「オホホホホホ、反吐が出ますわ。父親らしくだなんて」かくして、子供の問題以前に、夫と妻の間に走る亀裂が少しずつ明るみに出されてゆく。
少年のつくりあげた改造モデルガンが窓ガラスを破って上空に突きだされる時、母の叫ぶ声が住宅街のしじまを引き裂く!
「タロウ、撃っておしまいなさい。あなたを取り囲むこのウソっぱちの世界をです。そうすれば戻ってくる。私たちが誰であったか。私たちとはいったい誰でどこへ向かって生きていくのか、そういうことが。さあ撃て、血を流せ、たたかえ、たたかえぇぇっ!!」
すると暴風に吹かれた桜の花びらが嵐となって震えるその家を揺るがし、裏手にある稲荷神社からは90年代の家族をあざ笑うかのように狐の大群が押し寄せる・・・