爆裂弾は我が延髄に燃ゆ
1998.8.21~24 於:Theatreアンネフォール
作・演出 十六夜ひばく
照明 吉島大輔
音響 浦山あづさ
衣装メイク 篠原志奈
出演
有山智紀
真名子美佳
矢谷真樹
斉藤恵
竹内秀雄
葉田野絵弥
篠原志奈
富士山麓にあるアジトでは、いま、来たるべき人類の最終決戦=ハルマゲドンの準備に余念のない、或る新興宗教団体が息を潜めていた。そこには対人恐怖症の女や自閉症の娘、この世の幸福に価値を感じ取れない女など、社会とうまく折り合いのつかない人々が集まっていた。
物語は、ひとりのウダツのあがらぬ絵描きの青年が、恋人を訪ねに富士山麓へ向かうところから始まる。青年の恋人もまた、新興宗教の信者となっていたのだ。青年は女を説得してその団体から足を洗わせたいと願っていた。しかし、この世の幸福よりも大きな絶対的幸福を掴んだと信じて疑わない女は、青年の度重なる説得にも一向に耳を貸そうとしない。のみならず、彼女は既にその宗教団体において、ナンバー2の地位にまで上り詰め、教祖との間に肉体関係までも持ってしまっていたのだ。
女の視線はもはや「この世」ではなく「来世」に向かっていた。青年は女を「この世の幸福」に引き止めておくことのできなかった自分に責任を感じ、教祖と決着をつけるべく立ち上がるのだが、時は既に遅く、地下鉄テロ事件が発生する。
この世の幸福とはいったい何なのか。そして現代社会から与えられるその幸福を満喫している我々の世代とは。
「あちら側」へ行ってしまった人々と「こちら側」に残された人々。両者のあいだに走る亀裂を通して、90年代におけるもっともラディカルな問題に取り組んだ作品。