太陽の一族・憤怒の河

1999 於:Plan-B

 

 

作・演出 十六夜ひばく

照明・舞台美術 吉島大輔

音響 浦山あづさ

衣装メイク 篠原志奈

 

出演

中村英司

斉藤恵

竹内秀雄

真名子美佳

田上耕

小宮山秀樹

葉田野絵弥

神田達彦

あらすじ

その家族は父、母、息子の三人で構成される、一見フツーの一家であった。父は精神病院の院長であり、母は部落解放同盟の青年と密かに姦通していた。病棟は家に併設される形で建っていた。息子は気散じから、よく病棟に暮らす少年少女らのもとへ遊びに通っていた。

 

息子はつねづね、「この家はケガレている」と思っていた。自分はケガレたくない、「精神的なウヨクでありたい」と思っていた。テンノウ、と一言口にすると、雑音だらけなこの世の中が少しばかりシャンとして、筋道立ったもののように感じられる。社会に出ても人と折り合えず、女の子と接しても上手く性交することができない彼は、自分の欠陥をすべて家族のせいにしていた。その家族は彼をいつまでも「かよわい男の子」として扱い、溺愛することを止めなかったからだ。彼は、テンノウ、という大きな観念に繋がることで、自分の持つコンプレックスを清算し、何よりも強い、カゾクから独立したひとりの「男」になれる、と思ったのだ。

 

息子は精神病棟に暮らす少女と古事記にちなんだ「国産み」の儀式を行う。みそぎをして身体を清め、新しい自分の誕生を迎えるために「愛に溢れすぎたその家」を破壊すべく、バットを手に母親のからだを叩きのめそうとする。いつまでも終わらない息子の暴力を見かねて間に入った父は、やがて「俺こそが最も抑圧されているんだ。ジュン、わかるか!」と堰き止めていた怒りを噴出させ、奪いとった金属バットを息子の頭めがけて振り下ろすのだった・・・

 

死と再生、わが国のテンノウ制とカゾクを繋ぐ回路、またサベツの構造をテーマに、現代における神話を描こうと試みた作品。